鳥の子紙は、雁皮という植物の樹皮で漉いた紙を指します。
越前和紙の里は室町時代から鳥の子紙の名産地として知られており、
その引き締まった紙質と耐久性の高さから、「紙の王」とも称されます。
鳥の子紙の材料となる雁皮は繊維が短く細いため、きめ細かく緊密な和紙になります。柔軟性がある風合いや発色の良さから、昔から襖や屏風絵等に用いられてきました。基本的に原料は雁皮を用いますが、雁皮と同じジンチョウゲ科に属する三椏という原料を使用・配合したりすることもあります。
やなせ和紙は、昭和25年頃、和紙職人だった柳瀬さんの父親が独立し、かつて紙幣用紙工場だった建物を払い受けて和紙づくりを始めました。昭和50年に有限会社を設立し、現在は二代目となる柳瀬さんが家族を含む6人の従業員とともに鳥の子を作っています。
鳥の子紙は、木の桁に竹の簀と絹に柿渋を塗った紗と呼ばれる布を挟んで紙を漉きます。「漉いた紙を2枚重ねて、1枚の紙にします。重ねることでより緻密になるのですが、それを私たちは“地合いが良くなる”と言っています」と語る柳瀬さん。「最初に漉いた面が表に出るところになるので、漉槽に桁を入れたら繊維が均一になるよう思いきって漉くことが大事です」。
ここで作られる鳥の子紙は、主に襖紙として使われます。
「京都の職人さんの手によって彩られ、襖紙として使用されます。特に、金箔を貼るものは品質の高さが求められますね。
例えば、紙を漉くとき紗に傷や折り目があったりすると、漉き上がったときはわからないのですが金箔を貼ったとき出てきてしまうのです」。越前和紙の里は、昔も今も全国的な鳥の子の産地として知られています。「産地が変わると、鳥の子紙の色や風合いも変わります。今日まで越前和紙が生き残ってこられたのは、職人たちがお客さまの要望に柔軟に応えてきたから。ここ10年位お客さまと直接お話しをさせていただく機会も増え、お互いの顔が見える関係で一緒にものづくりをさせていただいています」。高品質のものづくりで培った信頼をベースに、人とのつながりを大きく広げています。